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  • 2020.04.24 Friday

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2019年度 絵画教室下落合アトリエ 年度末コンクール

  • 2020.04.04 Saturday
  • 14:35
 2019年度絵画教室下落合アトリエ年度末コンクールの全体講評と結果発表を致します。この度は新型コロナウイルスの世界的大流行の影響により、本コンクールの講評会が中止となったり、新年度の授業開始時期を遅らせる事となったり、いまだかつてない事態となりました。このような逆境の時こそ、日頃より鍛えし創造力を発揮し、この難局を打開してまいりましょう!
 制作期間中も全員のマスク着用や、アルコール消毒、手洗いの励行など、日頃とは違う異様な雰囲気ではありましたが、そんな中でも皆さん集中力を途切らせることなく、立派に作品を完成させることができました。それでは、皆さんの努力の過程と、その成果をご紹介させて頂きます。


2019年度の出題文
 年度末コンクールは本教室の学年末試験です。生徒の皆さんは、これまでの学習の集大成として作品を提出します。出題はこれまで、テーマを指定した難しい文章問題が多い傾向がありましたが、今回は全員共通の静物モチーフがセッティングされ、「モチーフを描きなさい」という非常にシンプルなものでした。東京藝大油画専攻の入試でも、数年おきにこのような出題をしています。この課題における出題者の査定ポイントは、作者の「描写力」と「価値観」の有無です。この二つは別物のようですが、実は連動しています。作者が何に価値を見出しているかによって、描写のポイントやスタイルは決定され、ひいては作者の世界観の表現へと昇華されるものです。日頃、本教室の生徒作品を見ていて、目の前のモチーフに全く反応せず、むやみに好き勝手なものを描いているな、と感じます。これはデッサン力(観察力)の未熟さ故に起こる現象なのか、それとも他に何か原因があるのか。今回の出題において、そのあたりも検証したいというのが、出題者である私のねらいでした。

本科のモチーフ

予科のモチーフ

制作風景(本科午後クラス)

制作風景(予科午前クラス)

審査風景

展示風景

展示風景

展示風景

展示風景

展示風景

展示風景

展示風景

展示風景

展示風景

展示風景

展示風景
 
審査は本教室講師により、下記の評価基準に則って厳正に行われます。また、後日配布される成績表には「描写力・構成力・表現力・発想力・独創性・色彩感覚・メッセージ性・完成度」の各審査項目を、5段階評価にて評定されていると共に、講師が各生徒に宛てた詳細な講評文が掲載されています。

評価基準
 それでは、審査結果の発表です。

首席 A' 平林 瑛海(予科・小学1年生)「夜中に歩く犬」


次席 A' 藤井 和音(本科中級コース・小学5年生)「昨日の音」

三席 A' 仲村 梨乃(予科・5歳児)「ルビー」

四席 A'  高橋 由美子(本科上級コース・大人)「混在」

五席 a゜ 大島 直季(本科中級コース・大学院生)「窓」 

六席 a゜ 増田 哲彦(本科上級コース・大人)「瓶の絵」

七席 a゜ 生田 憲司(本科上級コース・大人)「アトリエ」

八席 a゜ 平井 隆寛(本科上級コース・大人)「construction」

九席 a゜ 江口 鈴音(予科・小学1年生)「Crazy Mix Prize」

十席 a゜ 安藤 理保(予科・6歳児)「いろいろな色を描いてみたい気持ち」

十一席 a゜ 秀島 勇太(予科・小学1年生)「夜に動物が集まった」

十二席 a゜ 村尾 つぐみ(予科・小学1年生)「わくわくする犬」

a 奥村 尚也(本科初級コース・大人)「〇」

a 岩田 奈海(本科上級コース・都立総合芸術高校1年生)「焦点」

a 栗原 清子(予科・小学1年生)「番犬とボールが入った瓶を描いている」

a' 福澤 好江(本科初級コース・大人)「瓶とブロックと」

a' 青谷 真依(本科上級コース・高校2年生)「お前の言いなりになるくらいなら泥を食べた方がいい」

B゜ 大埼 千史(本科中級コース・小学5年生)「イセカイ」

B゜ 村尾 聡太(本科中級コース・小学4年生)「嬉しいような、悲しいような」

B゜ 佐藤 アスティ(本科中級コース・小学6年生)「無題」

B 伊橋 慶(予科・小学2年生)「色々な世界」

B 栗原 康盛(予科・3歳児)「いぬ」

B 仲村 まりや(予科・5歳児)「CANDY FARM」

B 広島 心美(予科・小学2年生)「夢の中で・・・」

B 佐々木 純麗(本科初級コース・小学6年生)「akadama」

B 清水 香帆(本科初級コース・小学4年生)「無題」

B 高雄 千砂子(本科中級コース・大人)「RED ROOM」

B' 安藤 英理(本科初級コース・小学2年生)「色と形」

B' 松本 怜奈(本科初級コース・小学3年生)「闇と光」

B' 鶴田 陽(本科中級コース・小学5年生)「akadama」

B' 永久保 宏代(本科上級コース・大人)「静かなまぼろし」

C 阿部 季氏宗(本科初級コース・小学4年生)「赤い玉と発泡スチロール」

C 石川 結美子(本科初級コース・小学6年生)「浮かび上がる世界」

C 野溝 日菜多(予科・小学2年生)「白犬と二つの玉」

C 西薗 ひな(予科・小学2年生)「リアルな子犬」

C 野村 耕太郎(予科・小学3年生)「犬のギャンブル」

C 中島 佳晃(本科中級コース・中学2年生)「ホルマリン漬けの猫」

D 小林 永茉(予科・4歳児)「shine」
 
以下の3点は受験コースの作品です。構図・構成・描写(形態・質感・空間)・観察力を、合格基準に達するまで今後1年をかけて磨き上げていきます。

B 朝倉 仙(本科受験コース・中学2年生)制作時間3時間

b 村尾 伊織(本科受験コース・中学1年生)制作時間3時間

C 佐伯 天絃(本科受験コース・中学2年生)制作時間3時間
 以上、全出品作品をご覧いただきましたが、皆さんいかがでしたでしょうか?
 2019年度の首席は平林瑛海さん、次席は藤井和音さん、三席は仲村梨乃さんに決定いたしました!受賞された皆様、誠におめでとうございます!こちらの上位三賞を受賞された方々には表彰状を、また、首席を獲得された方には賞品が授与されます。毎年、賞品は講師が首席の方に読んでもらいたいなと思う画集や美術書が贈呈されます。首席の方の顔を思い浮かべながら、今年はどの本にしようかなーと本屋さんを巡る時間は、私にとってとても楽しい幸せなひと時です。


賞品

賞品

賞状

賞状

賞状
 今回の年度末コンクールは、コロナ騒動の影響による休会者や棄権者もいらっしゃり、例年に比べてかなり少ない41名の参加者となりました。ランク別人数は、Aランクが17名、Bランクが16名、Cランクが7名、Dランクが1名という結果でした。開催年ごとに全体の作品のレベルは推移していくものですが、今回の特徴は、Aランクが過半数に迫る勢いではありましたが、最高位がA’であったというデータから、「全体のレベルは非常に高い水準であるが、ずば抜けた作品が無かった。」と言えるでしょう。一方で、予科の奮闘が凄まじく、下落合アトリエ12年の歴史の中で、初めて予科生が首席を獲得いたしました。また、席次が付いた上位受賞者12名中、なんと半分の6名が予科生でした。次席の藤井さんも本科生ではありますが、まだ小学5年生なので、上位三賞は全員小学生以下という驚くべき結果となりました。
 それでは、なぜ今回このような結果になったのかを考えてみましょう。冒頭で記述したように、査定ポイントは作者の「描写力」と「価値観」です。上位三賞を受賞した作品よりも、「描写力」を含むテクニックだけを見れば、優れた作品(特に本科生の作品)は、たくさんありました。しかしながら、テクニックがある生徒にかぎって、モチーフに対する反応が非常に薄く、作者の「価値観」が伝わりづらい作品が目立ったという印象があります。いくつか例を挙げて見てみましょう。


 四席の高橋さんの作品。描写力・構成力ともに非常に高い水準です。細密に描写している部分とフラットな色面部分、またコラージュなどを巧みに織り交ぜて、緊張感のある画面を構築しています。しかし、モチーフからどれだけの情報を引き出すことができているかというと、非常に希薄と言わざるを得ません。目や耳などのカラーの部分と、モノクロで描いたモチーフの部分に何ら脈絡を感じられません。瓶や発泡スチロールのブロック、あるいはカルトンにクリップで固定された木炭紙や、テーブルといった、一つ一つの素材をもっと観察し、その特性をもっと掬い上げる必要があります。木炭紙から何やら大勢の人が唐突に飛び出してきているようなコラージュ表現がありますが、木炭デッサンを描く為の用紙であるという特性を生かすならば、木炭で人体を描写したような表現が、コラージュと木炭紙の間にあったらどのように見えるうでしょうか?デッサンという虚像が、徐々に紙から抜け出して実像へと変化していく様を表現することができますよね。更に瓶には浮遊する人体の虚像が映りこんでいるようにしてみたらどうでしょう。瓶の材質感を表現することで神秘的な透明感や、ひんやりとした冷たい空気感が表現できると共に、虚と実が揺蕩う危うげな世界が見えてはきませんか?その不確実な世界を必死に捉えようとする目や耳たち・・・としていれば、文句なく首席になったでしょう。
 

 七席の生田さん(左)、そして奥村さん(右)の作品。両作品とも非常に質の高い抽象表現です。魅力的な絵画空間を構築しています。生田さんはモチーフの部分的なシルエットを組み合わせ、奥村さんは瓶の底の形や発泡スチロールの表面を拡大した表情で画面構成をしました。しかし、このコンセプトでは少々短絡的であると言わざるを得ません。色や形の絵画的作用、絵具の表情については十分に楽しみながら制作することはできていますが、この絵画は、今回のモチーフが無くてもできたんじゃないかな?と思ってしまいます。具体的な描写の無い抽象表現であっても、「確かにこの絵はあのモチーフを見て感じた心の動きだ!」と鑑賞者が感じ取れるものが必要なのでしょう。
  


 これらに対して上位三賞の作品はどうでしょう。いずれの作品もモチーフをよく観察し、一つ一つを味わいながら丁寧に描写しています。ここで言う「描写」とはどういう意味でしょうか?モチーフをリアルに描く「デッサン力」の高い作品は他に幾つもありました。にもかかわらず、この3作品の方が評価が高かった理由は何でしょうか?あるがままの姿を浮かび上がらせるように描くことを「描写」と言いますが、この「あるがまま」が重要なのです。「あるがまま」の中には、客観的形象の他に、心に感じたことという意味も含まれます。つまり「心理描写」です。この3作品は、モチーフを丁寧に観察しながら、心に湧きおこったあるがままのイメージを、心躍らせながら描写しています。首席の平林さんの作品タイトルは「夜中に歩く犬」です。動くはずのない犬の彫像が夜中にお散歩をする、という情景が彼女の心に浮かびました。実際の彫像の色は白でしたが、闇夜のイメージの黒を彫像の下地に使いました。普通なら背景の方を暗くしがちですが、犬の彫像の中に夜を創った彼女の独創性は、とても魅力的です。彫像の周囲のカラフルな配色と、そこに浮かぶ様々な形は、「さあ、これからお散歩するぞ!」というウキウキした犬の気持ちが表現されていると共に、作者の高揚感も感じさせてくれます。作者は夜間クラス在籍です。闇夜に灯りをともして、ぽっかりと浮かぶ小さな小さな予科アトリエでいつも心躍らせて絵を描きます。この犬の彫像は、きっと作者本人なのでしょう。見ている私もウキウキしてきます。

 三席の仲村さんの絵も、平林さん同様に物語性あふれる魅力的な画面を構築しています。勢いのある筆さばきが特徴的ですね。

 次席の藤井さんの作品は、平林さん仲村さんとは異なり、色紙による色面をモチーフの形状に呼応させながら、リズミカルかつ厳格に構築しています。この構築力は、彼女の年齢を考えれば見事という他ありません。今後の飛躍が期待でき、私もとても楽しみにしている生徒の一人です。

 

 惜しかったのは大島さん(左)と、増田さん(右)の2作品です。どちらも高いポテンシャルをお持ちであるにもかかわらず、僅かに描きかけの部分があり、未完成なのです。コンクールにおいて、未完成は致命傷になります。大島さんの作品のアイディアは抜群でしたので、この未完は本当に悔やまれます。指で作ったフレームでモチーフを囲んだ情景を、さらりとしたタッチで真摯に描くことで、作者の「内なる世界」と「外なる世界」を意識させつつ、そのクールな眼差しを追体験させることに成功しています。増田さんの作品は、いつもながら彼独特の魅力にあふれています。描けば描くほどにその魅力は増大するので、次回はしっかりと完成させてもらいたいと思います。



 今回、並み居るベテラン勢を抑え、上位を獲得した3名共が、かなりの低年齢であったので、審査の際に正直「本当にこれでいいのか!?」と何度も見直しました。しかし何度確認しても、この3作品の輝きは他の追随を許しませんでした。文句なしの優秀作品であります。大人の方々には、ぜひこれらの作品をご鑑賞いただき、つい忘れてしまっている子供心を思い起こすとともに、自らの「価値観」を再検討の上、「描写」への考察を更に深めて頂きたいと思います。

 人と違うことをすることは大切ですが、無理に奇抜な世界を作る必要はありません。目の前にあるごくありふれた物を、魅力的に見る感性を身につけましょう。ささやかなように思えますが、実はこれが強大な力となるのです。

 

 今回はコロナ騒動により、重要な合同講評会が中止となって、このようなブログ上での講評会となりましたが、いかがでしたでしょうか。次回の授業は、休校明けの5月9日です。それまでに、コロナに打ち勝つ抗体をしっかり身に着け、また元気にアトリエで制作できる身体を作っておきましょう!(笑)それでは皆さん、またお会いする日までごきげんよう!!



絵画教室下落合アトリエ

講師 村尾 成律

www.shimorie.com